創作系総合板

ふむ､普段から深夜帯迄集中為て仕舞う癖は治さねば成ら無いか…全く､時間を忘れるとは情け無い｡

扠､研究施設を名乗る以上一定の成果は不可欠だろう｡然う云う意味では為体此の上無いのだが…まあ､生憎と御出し出来る物は何一つ無くてね｡とは言え何も無い､では進む物も進ま無いと成れば話は別さ｡自分語りと云う程の取るに足りた物では無いが──…時間を持て余して居るのならば聞いて行くと良い｡他愛の無い､一晩経てば忘れる程度の雑談に過ぎ無いのだから｡前置きは短いに越した事は無いが､其れ位しか遣る事が無いのだと見逃して呉れ給え｡

今宵のテーマは『目に見えるモノ』と為せて頂こう｡片方の目が無い者が扱う物としては些か不釣り合いかもしれ無いが…興味の有る事に言及為る事で自らのモチベーションを高めるに繋がれば大した問題じゃあ無い｡…此れは何か､と問えば十中八九以上の者が黒い箱､と答えるで在ろう此の代物───然し中には赤い球体と答える者も居るだろう｡実際は黒い箱に見えて居るのか､将又真に赤い球体に見えて居るのかを知る事が出来るのは当の本人のみ｡視界を共有出来る､其れも確実にと根拠の有る施行の物で有れば他者も知る事は出来るのだろうが…まあ､色や模様の見え方に差異が有れど此れは四角い箱だ…勿論､触れる事で一層の根拠を得る事が出来るだろう｡我々は日々の風景､目で見える物を共有為る事が出来る｡本当に同じ物が見えて居るかは定かでは無いが､五感で感知出来る上に言葉で言い表す事で其れは確固足る信頼にも成る｡先ずは此処迄を前提と為る｡

だが､特定の者のみ視る事が出来る､感知為る事が出来る…其れに触れられる事が出来る時も有る､聲を聴く事も出来る｡他者は其れ等が出来無い､更に言えば其の空間に触れても何も感じ無い…正に無で在る｡其れを視る事の出来る人物の妄言と切り捨てる事は容易だろう…が､若し､其れが嘘では無かったのなら｡何を契機に､何の条件が有って､何故其れを視る事が出来るのか──…特定の者達の間での共通認識は何なのか｡言い出せば興味の尽き無い話題､見え無い者でも居ると信ずる者も居る…然う､幽霊だ｡

幽霊を任意に作り出す事が可能なのか｡所謂生物の様に赤子を拵える事で繁栄為る訳でも無い種と呼べるかすら怪しい物だが…とは言え此の次元にも奇怪な者は其れこそ片手で数えるには全く足り無い程だから実際に其処彼処に居ても不思議では無いのだが…｡全く､神様と呼べる者迄実在為るのならば何だって可能に等しい…或る意味浪漫の塊では在るのだが､万人に再現出来る物では無い｡とした上で矢張り気に成るのは其のテクスチャだろう｡特定の者に合わせて其の姿を現す事が出来､声は其の他の者にも聞こえる事が可能､聴こえ無い事も有り…何依り触れる事の出来る者､出来無い者を切り分ける事が出来て仕舞う｡此の黒い箱は確かに､誰にでも触れる事が出来る｡…にも関わらずだ､其処に存在為て居る筈なのに凡ゆる手法を使えど触れる事は出来無い…かと思えば向こうから触れる事は出来ると云った芸当も可能だと言う｡

仮に此のテクスチャを再現為る事が出来たのならば､俺に戻る手掛かりに成るかもしれない…と､期待が膨れ上がって仕舞うのさ｡では､退屈な話は此処迄｡高が人間から始めるには中々に良いテーマだと思ったのだが､如何だろうか｡

然し､暇では在るな｡時間の有効活用が出来て居無いと云った所か…ふむ｡

　
暇な人間み～っけ｡だにゃん｡ねこの部屋には誰もいないので､ねむねむであり乍も散歩に出たら､真逆真逆の巡り合い｡姿形不問ということは､愛らしい仔猫を拒まないという事｡つまりは野良猫訪問可の御部屋という事でいいのかにゃん?｡訪問した後に色々聞くのもなんだがにゃん｡ ( 人語ぺらぺら黒毛仔猫､いつの間にか部屋の片隅に出現しくしくし毛繕いし乍ゆったり横臥｡ )
　

───…はて､空耳だろうか｡何処から兎も無く女性らしき声音が聞こえた気が為るのだが｡嗚呼､俗世では中々如何為て…猫に人間を重ねる者も居るが､遂に俺も疲労に依る幻聴を…?｡と､長々失礼｡黒猫君､で良いのだろうか…まあ､正に猫と云った風貌の何者かに出逢った事等無いが…此処に入れたと云う事は歓迎為れた､と云う事なのだろう｡其れを拒む気は毛頭無いが…何､簡単な約束を一つ為て頂けるだろうか｡単純な事さ､室内に毛を撒き散らさない事───良いね?｡( 双眸左右往復為る事数秒､視界の端見慣れぬ存在感知為ては餌皿代替の食器に牛乳並々注ぎ横柄横臥猫手前に配膳｡ )

　
にゃん｡ねこはねこだにゃん｡声が女声なのは仔猫だからであろ｡仔猫の声は高いからにゃん｡毛を撒き散らす事はしないが､少しばかり毛が散る事はあるかもしれんにゃん｡どれだけ念入りにコロコロとブラッシングをしてもらっても､換毛期の毛の抜けには猫自身も人間も異種族も抗えぬ｡毎日風呂に入ろうが毛は抜けるからにゃん｡お‥?｡此れは‥毛を飛ばしたら容赦はせんという牽制か?｡ ( 牛乳前にし鼻をひくつかせ小さな耳と短い髭をぴくぴく揺らし舌先ちろちろ､しかし人間としての理性でどうにか口にはせず至近距離で匂いを嗅ぐのみ｡ )
　

仔猫の声等知らん､高いとは云えサンプルが一匹しか居無い以上判断材料も無い｡まあ､本人──否､本猫の言葉に大きく傾向為る事には成るが仔猫と云う事で声色の謎は鎮めるとしよう｡其の心構えが有る丈で充分さ､自身の不本意で毛を撒き散らす事に成ったとしても責め立てる気は無い…寧ろ数本位採取為せて欲しい所だが其れは君の帰宅後にひっそりと収集為る事にするよ｡牽制だなんて､迚も迚も｡生憎と猫を持て成した事は無いのでね…珈琲を差し出す依りかは幾分かマシだと思ったのだが､御気に召さなかったかな?｡とは言え其れ以外には猫に毒に成りそうな物しか無くてね｡此れを機に猫用の餌をストック為て於くよ｡( 目前屈み込み注ぐは好奇の眼差し､一挙一動視線追い掛ける不躾所作乍白衣依りがさごそ､餌類似品漁るも床落ちるは板チョコのみ｡ )

　
そこら辺は､動画サイトで聞いてみるといいにゃん｡実際､ねこは人間の頃の声とは違う声で話している故｡これは魅惑の仔猫ぼいすだにゃあん｡許されたにゃん｡ ( ころんびあぽーずねこ｡ ) ねこも何かしら研究している人の処に行くのであれば､それくらいするにゃん｡毛の採取は自由にしたらいいと思うにゃん｡多分､ねこがここから退いたら数本残るので｡そうであったか‥｡猫というものは､猫用の牛乳以外を飲んだら腹を壊すのでな｡普通の猫には飲ませてはいかんぞ｡ねことのお約束だにゃん｡正直､ねこは水さえあれば満足するにゃん｡それと､此の儘寝床を提供してくれれば‥｡ ( 視線感じ緊張故かくあ‥｡小さく口開け欠伸一つ､其の儘くるり丸まりぷうぷう小さな寝息立て乍初対面の人間の前であっさり就寝｡ / 御相手感謝だにゃん!｡ )
　

動画サイト…動画で仔猫を見ろ､と?｡其れでは動画と云う媒体を介した声に成って仕舞う…ならば生で聞く｡君にならば同じ様な仲間が居るのだろう?､隠さなくても良い…居るのだろう?｡──…ん?､人間の頃…?｡成る程､此の猫は元は人間で在り元来から猫では無かった､と｡( 両前脚鷲掴み｡ )何かしら研究為て居ると云う事が解る…成る程､元人間と云う言葉は信頼に足るか…太っ腹じゃないか､其れなら遠慮無く引き抜かせて頂くとしよう｡如何せ撒き散らすんだ､一本や二本位構わないだろう?｡…まあ､其の辺りの知識に聡くは無いが此の猫ならば大丈夫だろうと云う謎の信頼が有った…抑も普通の猫に餌付け為る気は一切無いぞ､餌を遣る人間と認知為れても大変だろうからな｡水､ねえ…適度に水を補給為せて遣れば良いか｡ならば此の牛乳は俺が処理為て於こう｡…ま､勝手に寝る分には赦して遣るか｡全く､気儘な性分は猫故にか?｡( 食器片掌乗せ片付け赴く途中ふと背後気配変化認識為て顔丈振り帰り就寝を確認､苦笑溢し常温水入れ替えた食器配膳｡/ 御相手感謝｡ )

時が経つのは早いが､ふむ…斯うも早く過ぎ去るとは想定外にも程が有る｡──然し目標が無ければ全く以て遅く成るとは､…まあ良いさ｡要は現在退屈な時間を過ごして居る丈なのだから｡

多少は退屈な時間が紛れると良いのだが､さて…如何為た物か｡

懐古は剰り為る事の無い質だが､如何にも脳裏に思い浮かび､描く光景が有ると云うのも中々に悪い物では無いな｡とは言え､此の俺が貌を得た時点で其れも遠い遠い御話さ｡扠､偶には自ら研究対象の幅を広げる行動も視野に入れねば進歩は為無いだろう｡依て───｡

退屈凌ぎがてら手慰みが欲しい所だが､早々手に馴染む物が手に入るでも無いか｡

昔々貌の無い男に大敗した事が有るの｡彼れ之れ遭った末に義手に成り最後の記憶はホテルの一室で胃に隠した宝石を吐いた事｡其の時の稼業はとうの昔に廃業したけど､こんなボロい研究所に侵入するくらいお茶の子済々!｡さァて何を盗まなきゃいけないんだったかしら?｡(/顔出迄｡)

此れは此れは､不思議な経歴を御持ちの客人じゃあないか｡貌の無い人物に腕を義手に為れるだなんてホラーか何かかい?｡然し其れを契機に廃業だなんて勧善懲悪物──…と一括りに出来る物では無いか｡其れにしても興味深い､或る意味掴みはばっちりと言って差し支えの無い挨拶だが…いやはや､君が聞きたい言葉は此れでは無いね?｡まあ､何だって良いさ｡…因みに此処に盗む物等無い､の前に足を洗ったんじゃ無かったのかい?､怪盗殿｡亦何時でも来給え､大した持た成しが出来るとも限らんがね｡( 支援感謝｡ )